【はじめに】

 

 自転車の洗車、『自転車の注油と簡易清掃』の紹介でもお分かりのように、

ロードバイクで路面を走行すると必ずと言っていいほどチェーンが汚れ、時には

服を汚し、黒くへばりついた粘性の高いヘドロのような物質のお陰でペダルの回

転そのものが重く感じられました。

 果たしてあの物質の正体はなんなのか?誰しもがその正体と発生する原因につ

いて思考を巡らせ、原因を除去し、常に綺麗な状態の自転車に乗りたいと考えた

こともあるでしょう。潤滑油の機能についてはここで取り上げて深く考察するこ

とはあえて致しません。なぜなら、それは専門的人材や機材によって研究する中

で進歩、発展するものであって、個人が検証できる範疇を遥かに超えています。

そこは専門的機関、製造開発会社に研究を委ねるとして、あくまでも自転車を愛

好する一人間としてこの問題について掘り下げ、原因について調べてみたいと思

います。

 

【考察にあたって】

    

 

 上記の左上の画像は潤滑剤を顕微鏡で100倍に拡大したものです。潤滑油の

成分、性質、特色といったものは、その用途によって大きく異なりますが、どの

製品も最初から黒く変色し汚れている訳ではありません。何らかの要因  それは

単一的要因なのか、はたまた複合的要因によって成り立っているかは不明であり

ますが、代表的な潤滑油といったものは澄んでいて、不純物の混入は見受けられ

ません。

 二枚目の画像はチェーンに付着している黒色化された物質をピンセットで取り、

大きさの比較として一円玉を隣に置いたものです。そして三枚目の画像がそれを

100倍に拡大したもので、最後は拡大率を1200倍まで上げて撮影したもの

です。

 最初は無色透明で澄んでいた潤滑剤が、何らかの要因によって黒く変色した  

潤滑そのものが性質を変化させ黒色化したのか、それとも潤滑油に何らかの物

質が付着し色化したのか、これらを検証してみましょう。

 


【潤滑油由来の黒色化についての検討】

 

 潤滑油そのものが変質し黒色化するという仮定についてまず検討してみたいと

思います。車のエンジンといったように燃料を高温で燃焼させる過程で汚れが発

生することは知られているかと思います。工業大学の専門家の論文でも高温化に

晒されることで黒色することが実証されています。ただ、自転車の場合はどう

考えてもあのように数百度の温度に加熱されることはありません。無色透明な潤

滑油が、人力によって、それも高々50km、2時間程度の走行距離であのよう

に黒色化されるには、きっと他の要因が関係して、影響を与えていると考えるほ

うが、整合性がとれているように思えてなりません。

 検討に際し、潤滑油を加熱、酸化それぞれ検証してみましたが、残念なことに

く変化することはなく、色、性質について変化は感じられませんでした。潤滑

油を加熱ると、ある温度を超えると激しく燃焼します。仮に私と同じように検

証する場合は、災等に十分注意して実験してみて下さい。短期間の加熱では黒

色化することもなく、十分な時間酸素を供給した結果についても変化は見られま

せんでした。難しいところですが、自転車の走行において潤滑油そのものが変質

するという仮定については、消極評価とせざるを得ません。

 


 

【大気浮遊物質由来の黒色化についての検討】

 

 

 

 大気汚染が進んでいるという点についてはもう疑う余地はないでしょう。アジア

諸国の経済発展に伴い、自動車が普及し、工場から排出された煤煙が微粒子として

大気を汚している、この点については報道を通して普段の生活においても意識する

機会があると思います。しかし、仮に大気中を漂う物質が自転車のチェーンに付着

して黒色化したというのなら、一日外で過ごした場合の鼻の粘膜はもっと黒くなっ

ていなければ説明がつきません。潤滑油を十分な時間(12時間ほど)大気に晒し

て顕微鏡で覗きましたが(画像左)チェーンを黒色化するほどの粒子は降下してま

せん。また、チェーンに潤滑剤が塗布され状態での検証についても概ね同様の結果

(画像右)でありまして、大気浮遊物質による黒色化の可能性は低いと判断します。

 


 

【金属磨耗による黒色化についての検討】                                      

 

    

 

 人体がペダルへ運動エネルギーを移行させる際には、絶えずチェーンには負荷が

掛かり、駆動部分では微少ながら金属の磨耗が発生していると考えられます。粘度

の高い潤滑油に磨耗した金属が付着して黒色化するという要因も考えられますが、

非常に短期間の走行において黒色化することが認められますので、潤滑剤によって

抵抗が低減される中で、あれほど早く黒く変色するのが金属によるものとは考え難

いです。もし金属によって黒色化するという仮説が正しいのであれば、十分に自転

車を清掃した状態で室内トレーニングをした場合、時間の経過とともにチェーンに

黒いヘドロのような物質が発生するということになります。テレビを見ながらロー

ラー台に乗っていたら次第にチェーンが黒色化してゆくとは思えません。

 チェーンとスプロケットの接触における金属磨耗を人為的に発生させ顕微鏡で確

認した画像が上のものとなります。顕微鏡の撮影というのも慣れず難しいのですが

光の反射によって色が多少変化してます。左の画像は反射鏡からの光を用いて撮影

してもので金属片が黒く写っています。しかし、直接金属片に光をあてると金属本

来のシルバーが光り輝いていて、これが黒くなり堆積しているとは私には思えませ

ん。

 


【休憩中】

 

 

 

 いやいや、この検証については疲れますね。今年も我が家ではメダカが産卵期を

迎えいます。   続いて次の検証に移りましょう。

 


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